今回も前回に引き続き手描きスケッチの重要性について記載します。
きれいな完成予想図はコンピュータツールを使ったレンダリングでいい、手描きラフスケッチは考えるための道具であり、かつ相手(クライアント、同僚、上司、他部署)に伝えるコミュニケーションツールでもあります。
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ある企業に就職希望者の作品集を持参して説明に行った時のこと。
先方の選考担当のデザイナーの方がその作品集の手描きラフスケッチを見て、「彼は絵が描ける方ですね。うちの製品は円の部品が多いので、この楕円を見ればある程度能力がわかります」そしてその候補者は書類選考を通過しました。
さらに、その次の面接でのこと。その担当デザイナーが就職希望者に、「突然ですが、そこのホワイトボードに簡単でけっこうですので○○のラフスケッチを描いてみてもらえますか」
○○には製品の種類が入ります。その会社は○○の専門メーカーだったので、そこに入ればその製品をデザインすることになります。
面接終了後にその担当者に聞いたところ、「ホワイトボードは描きづらいのでうまく描けないかもしれないが、それでも描いてもらうことでどの程度の理解があるかがわかる」とのことでした。
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私の尊敬する故 加藤雄章先生が、トゥールズアカデミーのインタビューで以下のようにおっしゃっています。
(以下ホームページより引用
http://www.tools-web.com/academy/004SMR/interview/first.html
http://www.tools-web.com/academy/004SMR/interview/third.html)
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絵を重視するというのは、絵の上手い下手じゃないんですよ。
デザインを発想するところでは、生身の人間が、手を使いながらものを描く、そして描くことで頭を活性化する──それが大事なんですよね。
(中略)
ただ、僕たちはデザイナーだから、何のためのスケッチなのかを忘れてはいけない。
僕たちにとって絵は、的確に、速く、相手を説得するためのコトバなんです。
だから学生にも、僕らの絵は記号でいい、と言ってるんですよ。
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自分の意思を「的確に」伝え、相手を説得するには、やはり練習が必要です。
今回も参考になるスケッチの本を1冊ご紹介します。
Design Sketching
KEEOS Design Books (Klara Sjölen and Erik Olofsson)
今回も英語のスケッチの本ですが、スウェーデンのデザイン学校が中心となって作ったようです。
この本の他の本との違いとしては、それぞれのスケッチに何を使って描いたかが記載されている点。例えば「青鉛筆」だったり「黒鉛筆、ボールペン、マーカー、楕円定規」「黒鉛筆、Painter」「ペン、マーカー、Photoshop」等。
おそらくその学校の学生のスケッチでしょうが、手描き説明用スケッチをメインとして構成しているので、とても参考になります。また、最終章でマーカーで簡易に陰影だけをつけたラフスケッチの描き方を、ステップバイステップで解説しています。
どんな職種でも採用試験で面接を必ず行うのは、候補者のコミュニケーション能力を知るためです。デザイナーは言葉に加えて、絵でもコミュニケーションします。
絵によるコミュニケーションは、言葉がわからなくても世界共通に通じるという利点もあります。これもデザイナーの強みだと思います。
ポートフォリオには、最終レンダリングだけでなく初期段階の手描きアイディアスケッチを加えることを強くお勧めします。