今回はデザインのスキルを「リスキリング」することについて記載します。リスキリングは、平たく言えば、社会人になって仕事も経験した後で「学びなおす」こと。ニュースなどで使われる言葉ですが、デザインにもリスキリングはあります。

桑沢デザイン研究所 夜間部で増える「就職を目的としない学生」
私は専門学校 桑沢デザイン研究所でプロダクトデザインのクラスで「ポートフォリオの作り方」を教えています。昼間部と夜間部で授業を持っていますが、夜間部の方には社会人の学生が1/3ぐらいいます。在職中の人もいれば、退職してきた人もいます。
そんな社会人学生で、ここ数年「転職する気はないんですが、、、」という学生が増えてきました。桑沢で2年間デザインを勉強するものの、今の会社を変わるつもりはないと。
背景は人によって様々ですが、例えば雑貨の商品企画職をやっているが、デザインもやってみたくなった、という人。また、今はアプリのUI/UXデザイナーをやっているが、会社が新規事業としてリアル商品のブランドを立ち上げるので、会社からプロダクトデザインも学んだら?といわれて会社に一部を補助してもらって学んでいる人。
皆さん社会人なせいか意欲的なので、「転職しないが授業で学んだことをまとめたい」とポートフォリオを作る人が多いですが、いずれにしてもこうした人が増えていると感じます。
40半ばでUXデザインを学ぶ
かくいう私も2022年、ずっと気になっていたUXデザイン/サービスデザインを学ぶべく、その分野の元祖である社会人向け専門学校「Xデザイン学校」を1年間受講しました。https://www.xdesign-lab.com/
社会人向けということもあり、私が受けたベーシックコースは5月から翌年2月まで、月に1度の日曜に午後いっぱいを使った全10回のオンライン授業でした。ただしグループワークがあるのでその時間以外でも作業がけっこう発生します。
受講して最も良かったことは、自分はUXデザイン、サービスデザインのことを「全然わかっていなかったのにわかったと思い込んでいた」とわかったこと。これは本当に恐ろしいことで、「自分がわかっていない」と認識できていないと、永久に成長できません。
例えば「デザインリサーチ」がデザインのリサーチだと思っていました。(「え、違うの?」と思ったそこのあなた!ぜひXデザイン学校で学ぶことをお勧めします!)
また、自分が知らない世界を知ることは勇気がいりますが知的な喜びがあり、毎週、憂鬱と楽しみが同居するような感覚でした。成長する時ってこういう感覚ですよね。
Unlearn(アンラーン) 学ぶために忘れる
リスキリングに関連して、Xデザイン学校で学んだ言葉を一つご紹介します。
「Unlearn(アンラーン)」という言葉で、何かを学ぶためにはそれまでの知識・経験が邪魔をするから、一度忘れる必要がある、ということです。
私のUXデザインの例でいうと、プロダクトデザインを仕事でやっていた知識・経験が「邪魔になる」ということです。プラスになるのではなく、マイナスになってしまうのです。
理由は、「ついついその得意分野を基軸にして考えがちだから」とのこと。
確かに自分自身、アイデアを考えるときはモノありきで考えてしまうし、中小企業のコンサルティングの場でも「製造業の中小企業の社長たちは、売り先も顧客も考えずにすぐにモノを作って相談してくる」というのはよく聞くことです。
独学でデザインした人にも有効
この仕事をしていると、特にグラフィックデザイナーやWebデザイナーで、デザイン系の学校で学んだことがなく、仕事で任されて独学で学んだ、という人が時々います。
それが、デザイナーの先輩に鍛えられた、ということであれば別ですが、何となく社内でデザイン「も」できる環境になって、Webなどで調べながらなんとか形にしてきた、という人は要注意です。多くの人が、どこか間違えていたり、安っぽいデザインをしてしまっています。こういう人にも、むしろこういう人は特に、デザインの学校や講座で学ぶことは有効だと思います。
学校や講座で良いのは、先生に提出してダメ出しをしてもらえるところ。できれば学校で、他のクラスメートの作品も見られる環境だとなお成長が早いです。独学で調べて作るだけではどこが悪いのかわからない。自分では何となく良さそうに見えるのでそのまま提出してしまう。周囲にデザインがわかる人がいないと、実はとてももったいない間違いをしているのに、その間違いに気づかいないまま何年もデザイン作業を続けてしまうことになります。それによって売り上げが何百万、何千万も損しているかもしれません。
人生100年時代だからリスキリング
リスキリングはデザインに限った話ではなく社会全体で使われている言葉です。人生100年時代だから、長い仕事人生、1つの仕事だけでは持たない、という背景があります。
デザイナーはもともと好奇心旺盛な人種です。この背景を恐怖ではなく、「いろいろな仕事ができて楽しい」ととらえ、積極的に新しいことを学んでいってほしいと思います。
以上です。
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