隆江さんは、2000年不幸にして脳梗塞で倒れ帰らぬ人になった 﨑川耕三さん(石川県の工業試験所勤務)の奥様。
浩三さんとは、高校も大学も私の後輩ということで、ヨーロッパ視察旅行も同室だったし、仕事の件でも何でも頼める間柄。
出張で上京した時などは、土日にかかると鎌倉をご案内したこともあったので、大きなショックを受けた。
奥様に時間が許されたら彼と歩いた鎌倉をご案内したいと申し上げたところ、後日、鎌倉に見え、思い出のコースをご案内した。
しばらくして、奥様が趣味で木工を勉強し始め、金沢の職人学校に入学。
そこで作ったきれいな欅の小さな茶受をいただいたことがあった。
(『野次喜多本』より抜粋)
その彼女を”日曜大工入門”したいという山下明美さん(元・岡山県立大学デザイン科教授)に紹介したところ、
お土産にと手作りの竹製ナイフ?(写真)を頂いた。
(うら面)
( ※先端がテーブルにつかないように考慮されている。)
ナイフですかと問うと、「何でもお好みに使ってください」と・・・
ペーパナイフにも使えそうだし、ケーキを切ることも、
サラダ作りの調理器具にも使えそうなシンプルな形をしている。
江戸の指物師の仕事ではないが、一種の日常使える手作りの工芸品、
竹で出来ていて手触りがよく、実にあたたかく、感触が良い。
あの鉄やステンレスの「スプーンやフォーク」の冷たさはないから非常に気に入った。
思えば、私たちの世代は台所のツールは、すべて木工製品。そこで育ったと言っても過言でない。
ご飯のしゃもじも、みそ汁お玉、お椀も輪島塗、みな木製品だったから、頂いた竹製ナイフ?は、
非常に懐かしく、何に使うか、頭の体操しながら、先ず、台所から使い出したが、
いつの日か“我が書斎のペーパナイフにも昇格”すると思うと夢も膨む。
時には、ギフトとなるもの “使い道を個々で考えるもの” を、送るのもセンスありと、
ちょっといい話と思った。
(喜多謙一)
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