書評「デザインの骨格」 (山中俊治著)

ビートップツーの取締役、木全(きまた)です。
木全は主に国内のデザインコンサルタントを担当しております。
これからたまに、デザイン書籍の紹介をしようと思います。
今回は、日経デザインの太田憲一郎さんから献本いただいた
「デザインの骨格」(山中俊治著)の書評です。

基本的には、いままで読んできたデザイン関連書籍の
書評をするつもりですが、献本していただければ、
書評を書かせていただきます。献本お待ちいたします(笑)。
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■「デザインの骨格」は品がいい
著名な工業デザイナーである山中俊治氏の著書
「デザインの骨格」は分厚い本である。
最初、献本していただいた本の厚さを見て、
読むのがしんどそうだと思ったのだが、
読み始めたらあっという間に読了していた。
読みやすかったのは、もともと、山中俊治氏のブログである
「山中俊治『デザインの骨格』」でのエッセイを
書籍にしたということもあるし、
項目ごとに掲載されている写真やスケッチが
きれいだということもある。
でも、それよりもこの本を読みやすくしているのは、
全体を通して感じられる「品のよさ」ではないかと思う。
デザイナーが書く本は、どうも説教臭い。
自分も含め、デザイナーの本は
「まだまだ日本でデザインをわかっている人が少ないから、
デザインの啓蒙をしなければならない」
という使命感に駆られて書いている場合が多い。
それはそれで、重要なことだと思うが、
それはある意味押し付けがましい。
そのような押し付けがましさが、
「デザインの骨格」にはほとんど見当たらない。
山中氏のこういう姿勢を「品がよい」というのだと思う。
だから、スラスラ読める。
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■稀有な人材
でも、デザイナーとして、言うべきことはしっかり盛り込まれている。
科学は世界を単純化して考える
なぜ上空から降ってくる雨が痛くないのか?
ポテンシャルエネルギー
フェルミ推定
インボリュートギア
など、工学の言葉を使い、
冷静な視線で世界を見る技術の重要性を伝えつつ、
しかし、頭でっかちになりすぎると、
「四本足のニワトリ」を描いてしまう現実を戒めている。
つまり、バランス感覚がいいのだろう。
品よく、嫌味なく、主張すべきことを伝えている。
そのバランスのよさは、山中氏の出自に関係がある。
山中氏は大学で工学を学びつつ、漫画家を目指して
スポ根マンガばかり描いていたそうだ。
彼のバランス感覚は、工学系の左脳的な感性と
スポ根マンガの右脳的な感性の
バランスよさから来ているのかも知れない。
そのようなバランスのよさは、たぶん、誰でもできることではない。
本書の中で、山中氏が目指していたマンガが、
大友克洋や士郎正宗ではないかと指摘される話が出てくるが、
たぶんその直感は間違っていない。
大友克洋や士郎正宗が、
漫画の世界の中でも稀有な存在であるのと同じく、
山中氏も稀有なデザイナーなのだろう。
(そういえば、士郎正宗もキャプション好きだし。)
これから、山中氏のような「品のよさ」と「バランス感覚」は
益々重要になってくるはずだ。
(木全賢)
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