父の個展

私の父は今年、年男で、また、めでたくも1月1日生まれときている。
その84歳になる父が名古屋で2回目の個展を今月3日から開いている。

1回目は3年ほど前に両親の田舎の幼なじみの勧めで、友人が経営する

喫茶店を会場に個展を開いた。

父はその昔、ある弁護士の書生をしながら弁護士を志していた。

しかし時代が悪く学徒動員で飛行機を組み立て、終戦と同時にそのまま
会社に入り定年まで車のエンジニアとして職を全うした。

60歳で定年退職。特に趣味のなかった父であるが生まれつきの器用さも
あってか、自称「知多の魯山人?」と称し、朝は農家から借りた畑で
野菜を育て、昼はガレージ奥に作った工房?で陶芸に勤しみ、夜は私が
使っていた部屋で水墨画を描くという生活を送っている。
今回の個展は会社時代の後輩や元部下の方々のはからいで、年男の
お祝いに企画してくれたものだ。
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父個展2.jpeg

その水墨画、陶芸、数十点のあいだには82歳の母の手作り人形や
ちぎり絵も飾られている。

戦争により父は弁護士になるという夢を果たせなったが退職後、趣味を

見つけそれに熱中する事が出来た。
また、それを友人や後輩、元部下の方々が支えてくれる。
このような幸せな両親のおかげで私も自分の夢を果たす事ができて
とても感謝している。

企業勤めならば私もそろそろ定年を迎える歳になってきた。
しかし、好きな事が仕事となっている今、未だに趣味と言える趣味を

見つける事は出来ていない。

この先、父のように趣味を見つける事が出来るかどうか?
はたまた、体が動かなくなるまでこの好きな仕事をし続けて行くのか
自分でも今は解らない。
 
(井上 和世)
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