3Dプリンターの歴史は20年あまりと言われているが、ここ数年の
低価格化に伴い我々の身近になった事には目を見張る物がある。
3Dプリンターのカフェが出来たり、最近のニュースでいえば、ネットで
データを入手できれば拳銃も出来ると話題になった。
私の知る多くの「ものづくり企業」も3Dプリンターを導入したり、
導入予定を立てている。
先日聞いた話では3Dプリンターで作った試作を客先に見せた。
もちろん「これは3Dプリンターで作った概念モデルです」と説明。
ところが、客先担当者は「表面の処理が違う」「穴の形状が違う」
「材質は製品と合わせる事が出来ないか」等々・・・。
社長曰く「取り付く島も無かった」「今まで通り手作りで見せれば
良かった」と反省しきり。3Dプリンターに頼りすぎた結果だった。
もちろんこれはほんの一例だが、この話を聞いて私はデザインの
世界にパソコンが導入され始めた頃を思い出した。
いち早く友人のグラフィックデザイン事務所が導入した。
パンフレットをプリンターで出力見本としてプレゼンテーションした所
までは良かったが、印刷で上がったものと色が違うとクレームが付き
大騒動。
オフセット印刷の4色分解とインクジェットプリンターの印刷の差が
出てしまった結果だった。
パソコンの進化や3Dプリンターの進化は、「デザイン」や「ものづくり」を
一般化していくであろう。
しかし「ものづくり」に精通した者同士で使う分には良いが、そうでない
人から見ると何でも簡単にできてしまうという誤解が生まれそうで怖い。
デザインの世界で良くある話。
「パソコンでチョチョッとやってョ」的な事が「ものづくり」の世界でも
起きるのではないかと危惧している。
以上
(井上 和世)