2週続きの春の雪の後に、嬉しい”春便り”が届いた。
日本の工業デザインの草分けで、日本民芸館名誉館長を務め、
一昨年亡くなられた柳宗理さんの記念館が、金沢市に3月26日に
オープンする。出て来ないかと誘われ、私も不肖・弟子の一人と
して喜んで参加を決めた。(2012年1月のブログ参照)
金沢市内の交通の便のいい橋場町で、老舗をリニューアルし、
金沢市が「金沢美術工芸大学 柳宗理記念デザイン研究所」という
正式名称でオープンするというのである。
「単純、純粋、鮮明、明瞭、正確、機械科学文明のこれらの性格は、
新しい世代の我々の目を捉え、我々の心を浄化する。」と、65年前に
師が工業デザインのことを『工芸ニュース』に書いている。
また師は「くつろぎの場所、風呂」と題して、「今日アメリカでは
バスルームがたいへんに発達して、フロにはいることはドレッシング
(着替え)の一部であるとまで発達してきた。すなわちアメリカの
おフロは、あくまでからだを洗うという毎日の営みであり、また
ビジネスである。またおフロ場の形態は、個人のプライベートを
重んずるということから、あくまで閉鎖的なつくりをなしている。
これに反して日本のおフロはむしろレクリエーションであり、
レジャー的なエンジョイの場である。日本人は浴槽の外でからだを洗い、
おフロの中では静かに首までつかる。
いずれにしても日本のおフロはビジネスとはいえない。一日の生活に
欠くことのできない、くつろぎの場所であったのである。」
さらに、「以前の日本人のもっていた、ささやかながらも生活に対する
時間のゆとり気分のゆとり、といったものも今後も失いたくないもので
ある。」『日本再発見』読売新聞社編より抜粋。59年前に書いている。
パッとしない日本のデザイン界こそ、今、くつろぎの場所を必要と
しているのではないか。風呂もいいし、新装成る師の「柳宗理記念
デザイン研究所」で、歴史に学ぶのも良いのではと、帰省の楽しみが
一つ増えた不肖・弟子の弁。
(2014年2月28日 喜多謙一)