「思索する」終身デザイナー職の魅力

 「春風やカードケータイ車無し」世代の、飲み食いダベル会の和やかな
懇親会光景を、作家の出久根達郎さんが友人の句として紹介している。
(日経の夕刊6.6)
大正か昭和初め生まれの、戦争でご苦労された御先輩だけあり、
“生活力”がはっきりしていて何ともほほえましいと思った。
が、そうは言うものの、JRに乗るにしてもカードが必要だし、
ケータイに至っては、私の友人など日曜大工しながら屋根から
落ちてケータイで救急車を呼び、肋骨が3本折れただけで助かったと、
ケータイを命の恩人と言い続けている人もいる。

車に至っては、高齢者の事故多発で運転しない方が良さそうだが、
都会は公共交通機関があるものの、地方では車が無いと生活が難しい
ところも多い。
 
デザイナー職で見る限り、我々はこの10年余り、めまぐるしい進化の中で
デザイナーとして、カード、ケータイ、車のデザインをすることで
生きてきた。
しかし、高齢者向きのデザインが少ないから、”デザイン力”が
至らないために上記の世代に受け入れられなかったのではと、時には
反省をも持ちたい。
というのは、カード、ケータイの矢印デザイン一つ見ても見づらい
ものが多いし、カーナビにしても若い人は使いがこなせるが、高齢者には
配慮がまだまだ足りないデザインが多い。今後は介護ロボット開発に
政府が力を入れるそうだが、使いやすさを含めてのデザイン力が
ますます要求される。
 
文明機器を敬遠する美徳の生き方も良し、カード、ケータイ、車を
使いこなし、生活をエンジョイする生き方も良しとし、それぞれの
生き方のデザイン提案ができれば、終身デザイナーの生きがいにもなる。
要は、今のデザイン界の「閉鎖ぶり」からの脱出のチャンスでもある。
介護ロボットを使いこなせないと介護してもらえない、”笑えない現実”が、
そこまで来ていることを肝に銘じておきたい。経験豊かなデザイナーの
“感と知恵”がますます求められる。
「思索する」終身デザイナー職の出番でもある。
(喜多謙一)
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