・基礎課題の掲載について
よくご質問があるのが、基礎的な課題、例えばデッサンや平面構成、立体構成の扱いについてです。
これは、特に基礎的な実力のある方は、最後の方にまとめて付属資料のような扱いでまとめて掲載すると良いです。あくまでも付属ですので、パラパラとめくっていてもわかるように、縮小するなど見やすくまとめましょう。
あまり基礎的な実力に自信のない方は掲載しない方がいいかもしれません。ただ、いろいろな課題があるかと思いますので比較的得意なものは掲載した方がいいと思います。
・1年の頃の未熟な作品の掲載について
これは前回の掲載順とも関わりますが、作品数が少ないのであれば後ろの方に小さく載せるのが良いでしょう。作品数が十分にあるのであれば、掲載しない方が良いです。レベルの低い作品を見て、それが今の実力と勘違いされてしまうと損ですので。
しかし、例えばラフスケッチをとにかくたくさん描いて進めた、とか、身の回りの人にインタビューして進めたなど、特筆すべきアピールポイントがあるのであれば、そこにフォーカスして掲載すれば効果があります。
・グループワークについて
学生の方の作品集を見ていると、多くの方がグループワークにかなりのページを割いて掲載しています。本人としては思い出深いのでぜひ載せたいのでしょうが、ほとんどの場合、企業側に何も伝わっていません。
一番多いのが「思い出アルバム」になってしまっていること。作品の説明の合間にグループ活動の写真が入っていて、仲良く楽しそう、というものです。これは本人や友人のことを知らない人からすると全く意味のないものです。
グループワークでの作品は後半で小さく掲載する程度でいいと思いますが、その中でアピールするとすれば、以下の点です。
-そのグループ作品の中のどこを担当したか
これは最低限必要ですが、記載をしていない方がよくいます。
-グループの中でどのような役割をしたか
プロジェクトを管理した経験やリーダー経験はプラスのポイントです。「ムードメーカー」や「調整役」でも、記載しておけば人となりがアピールできるかもしれません。
・学校以外の作品の掲載について
学校の外での作品、例えばコンペに出して入賞した作品や、友人から依頼されて作った作品なども、掲載してOKです。特に入賞した場合は入賞した事実が一目でわかるように、「勲章マーク」を付けるなどしてアピールしましょう。
ただし、学校外の作品は学校課題ほどの時間をかけておらず、作品のクオリティが低い場合が多いです。その場合は、後半や最後の方に、小さく掲載しましょう。こんな方向性の作品も作れる、という自分の「幅」を見せるためです。
(弊社が運営受託していた「かわさきデザインコンペ」での入賞作品を大々的にアピールして、某企業に入社した方もいらっしゃいます。その方はリサーチ、スケッチがしっかりしており、最終レンダリングもきれいだったので作品自体にアピール力がありましたが)
・その他ポイント
– ページ番号(ノンブル)は「つけない」方がよい。(作品集は順番を変えたり、ある作品のページを増やしたり減らしたりする。その際に、その後のページの番号を全ページ書きかえるのはかなりの手間。ミスも出やすい。)
– 画像付インデックス(目次)があると最後まで読んでもらいやすい
– 早い段階で他人に見てもらう。(先生、友人など。30%の段階でOKなので見てもらう。その時に思わず口にしてしまう補足の言葉が、現時点でまだ表現しきれていないポイントかも。)
– 英語を多用しない。(一般的な単語であればよいが、聞きなれない単語だと見る人が本当に理解してくれるか?相手のことを考えるのが「デザイン」)
– 誤字脱字にも注意。正確な仕事ができない人、と思われる。
– 顔写真は好感が持てるものにする。笑顔が基本。ナルシストにならないように。(解説:よく、アーティストを気取った写真を見かけますが、、、企業は後輩を探しています。見ず知らずの若者がそんな気取った写真だけで自己紹介してくるのと、笑顔で話しかけやすい写真の若者だったらどちらを後輩にしたいでしょうか。)
– 受賞した作品や、褒められたことは積極的にPR。「クラスで投票一番になりました」でもPRポイントになる。ただし、作品内容が良くなければ、作品は小さくする。
– レイアウトデザインに自信のない人は、まずは良いレイアウトをそっくりまねしてみる。真似をする過程で、多くのことを学べる。BehanceやPinterestで、「Industrial Design Portfolio」と検索するといろいろ良い作品集が出てくるのでそこから学ぶのも勉強になる。https://www.behance.net/search
以上です。学生の方は大変だと思いますが、まずは良い作品を作ることが第一、ということを肝に銘じてください。作品集はその後です。
もう一つ、相手は一緒に働きたい後輩を探している、ということを忘れずに。実力がまだ低くても、人の話を素直に聞いて成長しそうな学生であれば、企業はほしいと思うでしょう。
逆に多少周りよりも実力があっても、プロの目から見れば大差ない場合が多いので、そのことを鼻にかけて人とぶつかってしまいそうな学生は当然受かりません。
(下村航)